KDDI株式会社と共同で運営するスマホ決済サービス「au PAY」のプラットフォームを支えるauペイメント株式会社。グループ最大の顧客接点となる「au PAY」を軸に、幅広いユーザーに多様な金融体験を提供しています。
また、銀行、クレジットカード、証券、保険など、KDDIグループのなかでも成長・注力領域である金融事業を展開するauフィナンシャルグループ(以下、auFG)各社の連携・クロスユースの推進をめざすなか、「au PAY」内の機能で、au FG各社サービスの利用状況をまとめて確認できる「お金の管理」の特性に注目。新たな付加価値の提供に向けた「お金の管理」サービスのリニューアルプロジェクトを始動しました。
ゆめみは本プロジェクトにおいて、同サービスの新規コンセプトをUX/UIへ具現化する過程から伴走し、UIデザインの制作を支援しました。
対話が核となった本プロジェクトについて、座談会形式でいま一度対話を重ねながら振り返ります。
左からゆめみ小川、原賀、auペイメント森岡様、門沢様、江藤様
auペイメント株式会社
グループ連携企画部 部長 森岡 慎介様
グループ連携企画部 グループ連携企画課 課長補佐 門沢 伸悦様(ディレクター)
グループ連携企画部 グループ連携企画課 主任 江藤 翔太郎様(プロダクトマネージャー)
株式会社ゆめみ
アートディレクター/リード・UIデザイナー 小川 段
UIデザイナー 原賀 美空
※インタビューは2025年4月に実施
――本日はどうぞよろしくお願いいたします。最初に、本プロジェクトが立ち上がった経緯や当初の課題感について教えてください。
森岡様:「au PAY」についてKDDIと当社が共同提供を始めたのが2023年4月。金融領域のauFGが運営主体となり、今後どのような方向性でお客さまに新しい付加価値を提供していくのか模索するなか、着目したのが「お金の管理」でした。
当初は家計簿機能の要素が強かった「お金の管理」には、auFGが提供する金融商品やサービスの利用状況を一元的に管理できる機能があります。その特性を生かしながら、さらにお客さまに能動的にご利用頂けるシーンの解像度を高めていくことで、auFGへの送客やグループ間のクロスユースを促進できる。au PAY アプリの新たな価値提供にもつながると考えました。
江藤様:そこで24年度は「お客さま自身の生活スタイルに適した金融サービスが分かる/学べる/体験できるサービスの提供」をコンセプトに、「お金の管理」のUX/UIをリニューアルしていくこと。大きくは「お客さまに寄り添うこと」「利用状態をより可視化すること」「新たな気づきを提供すること」などの方向でTOP画面を検討していくことが決まりました。
けれど、いざコンセプトを実際にデザインやUX/UIに落とし込もうとすると、社内でもいろいろとアイデアは飛び交うものの、どれが正解で何が最善策なのか。果たしてau PAYの世界観や体験設計に沿っているのか、中々客観的にジャッジできない。それで、かねてからau PAY アプリ本体のUX/UIデザインをご支援いただいているゆめみさんにご相談させていただきました。
――その後、UX/UIの「正解」はどのようにして導き出されたのでしょうか?
江藤様:まず当社の考える「au PAY」の将来的ビジョンや「お金の管理」の課題感についてお伝えした際、ゆめみさんが先ほどのコンセプトを「ツールからパートナーへ」というとてもシンプルな表現に置き換えてくださったことで一気にゴールイメージが明確になった印象でした。課題に対する目先の機能追加にとらわれず、お客さまに寄り添うイメージで必要な機能を補完しながら「お金の管理」の持続可能な成長をめざせばいいと腹落ちしました。
小川:前提は踏まえつつも、本プロジェクトのずっと先の将来像として「お金の管理」がお客さまの頼れるパートナーとなって一人歩きする姿を思い浮かべながらご提案させていただいたものです。
原賀:私はお金の管理が苦手なので、ただ高機能なツールという見えた方だけではやる気になれないというか、自分でやれと突き放された気がして、使う前から挫折しかねない。その点、パートナーという言葉には一緒にやっていきましょうという温かみが感じられるし、見て楽しいと思えれば使いたくなるし、続けられる。「お金の管理さん」と対話している感覚で楽しく資産管理に取り組めるようなデザインを意識しました。
小川:あと、ゆめみメンバーは二人とも「お金の管理」を使ったことがなかったので、最初に触れたときのフレッシュな感覚は最後まで大事にしました。何度も繰り返し使ってみては、受ける印象や使い勝手、わからない部分など、感じたままフラットにお伝えしながら、今回メインとなるTOP画面の改修から「お金の管理」の将来像まで、1カ月くらいかけてとにかくいろんなお話をして、その場で画面の構成や半デザインのところまでご相談しながら本プロジェクトのUX/UIを具体化していきました。
そもそものお題はホーム画面のリデザインでしたが、将来的に実施したい内容からドリルダウンしていって、今回のスモールスタートの範疇でできる新規ページやイラストの追加など最大限のご提案させていただきました。
門沢様:こちらの抽象的な意見を汲みとりながら言語化し、デザインにしっかりと落とし込み、素早くブラッシュアップしてくださる。タイトなスケジュール内に成果物をよく収めていただきました。
また、サービス未利用の方に「お金の管理」を通じてどのようにコミュニケーションしていくかも本プロジェクトの核となる部分なので、社外の、かつ今回初めて利用されたゆめみさんからのご意見は示唆に富んでいました。期間が限られるなか、体験設計に関しても十分な時間をかけて会話のキャッチボールをしながら進められたことで、バランスよいアウトプットが見出せたのだと思います。
森岡様:「バランス」は本プロジェクトのキーワードであり、いちばん難しかったところかもしれません。お客さま目線は大事にしながらも、auFGとして金融事業領域を拡大していくというミッションが前提にある。事業における成長をしっかりと実現していく必要があるけれど、押しつけがましいコミュニケーションになってはいけない。それならどういった体験がよいのか、というすり合わせにしっかりと時間をかけてディスカッションを重ねて、コアな部分の見せ方を確定できたことで、後のデザイン設計が進めやすくなりました。
——具体的に、今回リニューアルしたUIデザインについてこだわりポイントとともにご説明いただけますか。
江藤様:メインは当社が便宜上「コミュニケーションエリア」と呼んでいる、お知らせやキャンペーン情報が定期的に流れてくるステータスバー部分の刷新です。事務的というか、少し堅苦しい感じに見えるのを吹き出し調にして、新たにキャラクターも載せて、こちらに話しかけているような親しみやすさを演出しています。
小川:さらにいうと、コミュニケーションエリアに関しては将来的な展開においてもコアとなる部分なので、UIももちろん大切ですが、合理性以上に「寄り添うパートナー」というコンセプトに沿ったデザインとしてしっかり伝えるビジュアルになるよう意識してつくりました。
サービスイメージ
江藤様:二つ目は、auFG各社金融商品の残高や利用額を一覧表示していたところに、すべての利用状況を総括する「資産残高」を加えたことです。
これまでも情報量としては十分でしたが、それらを見て何をすればよいのか、何ができるのかまではわからない状態でした。そこで、auFG金融商品における現時点での総資産から負債分を差し引いた「資産残高」をいちばん目立つところに表示させて、わかりやすく確認できるようにしました。リアルな資産を可視化することでマネープランが立てやすくなるし、クロスユースにつながる次のアクションをアシストできると考えています。
小川:あと、原賀さん渾身のチュートリアルですよね!
二人でいろいろ画面を見ていっているなかで、未利用者にはオンボーディングがあったほうがいいよねって話になって。
原賀:はい、絶対にあったほうがいい。楽しい感じのオンボーディングをつくりましょうと力説して、ご提出できていないものも含めて、3ページ分くらいイラストを制作しました。
江藤様:チュートリアルに関してはお客さまが最初に目にする画面になるので、こちらも神経質なくらい細かい部分まで調整をお願いしました。たとえば、利用シーンを描くにあたって「お金の管理」って本屋ではあまり使わずにお家でくつろいでいるときに使うだろうなとか、ここまで見るユーザーはいないだろうという箇所までこだわっています。
お金の管理が苦手だとおっしゃる原賀さんが考えてくださっているので、直感的に使えて目にも心にもやさしい画面になっています。ぜひたくさんの方にご活用いただきたいですね。
――本プロジェクトにおけるゆめみの取り組みや伴走についての印象をお聞かせください。
門沢様:繰り返しになりますが、ゆめみさんの傾聴力には驚きました。私自身がもともとデザイナー職で、部内外のいろんな発言や要望を適宜「通訳」する機会が多いので、余計にそのすごさがわかるというか。こちらが抽象的な要望をあれこれ投げかけても、全部拾ってブレイクダウンしては、すっきりした直感的なデザインに落とし込んでくださる。毎回ゆめみさんの言語化スキルにほれぼれしながら定例に臨んでいました(笑)。原賀さんにはディスカッションの場で何枚もイラストを描いていただきましたよね。
原賀:こちらこそ、手を動かしながらその場で細かい部分までご相談できることで安心して進められましたし、即座に意思決定いただけたことでスピード化も図れました!
江藤様:個人的な話では、Figmaの活用をご提案いただいたことで、その後の運用がスムーズになりました。使い方もレクチャーしていただきましたが、これまで使ったことのない私でもとても使いやすかったし、自身でできることが増えました。
たとえば何枚か納品いただいたチュートリアルの絵をリリースのタイミングに合わせてこちらで簡単に差し替えることができて、運用面でもすごく助かっています。
今後の「お金の管理」に関しては、当社として「お金の管理さん」というパートナーをいかに育てていくか。各社データやAI、さらにはグループ連携で、しっかりコミュニケーション設計していければと思います。
森岡様:当社は「お金の管理」はもちろん、au PAY アプリを含め、auFG全体としてのパフォーマンス最大化に向けて、それぞれの担当者が日々工夫を重ねながら対応をしています。
au PAY アプリのご支援を通じてKDDIグループのバックグランドを熟知されているゆめみさんには、デザイン関連の体験設計をはじめ、お力をお借りする機会がますます増えそうです。ぜひ今後とも引き続きよろしくお願いいたします。
――こちらこそ、引き続きよろしくお願いいたします! 皆さま、本日はありがとうございました!