KDDI株式会社
KDDIが2019年4月から提供する「au PAY(au ペイ)」 アプリは、auユーザー以外でも利用できるコード決済サービス。QRスマホ決済やチャージはもちろん、ポイント運用や投資、ネットショッピングやフードデリバリなど、生活密着型のさまざまなサービスと連携しながらリニューアルを重ね、いまやおよそ2830万もの会員数(アプリ単体・2022年2月時点)を誇るスーパーアプリへと成長しています。
2019年4月のリリース以降、銀行・投資・保険などKDDIグループの決済・金融サービスとさまざまな生活密着型サービスが連携した、誰もが便利に使えるスーパーアプリとして利用シーンを拡大し続ける「au PAY」。
ゆめみでは、UIデザインを主軸に、これまでに実施された数々のプロジェクトに参画しています。また、2022年1月に発表されたリニューアルではKDDI様のデザインチームと一体となり、総合力と高い専門性、機動力を武器に最大限バックアップ。伴走型パートナーとして、足元の課題解決だけではなく上流工程かつ長期的な目線で課題感やゴールの方向性を共有しながら、ユーザーにとって使いやすいインターフェース実現に継続的に取り組んでいます。
今回はKDDIで「au PAY」の企画開発プロジェクトを推進されている、マーケティング本部・au PAY企画部の矢熊様、鹿島様に取材の機会を賜り、プロジェクトの変遷や取り組み、今後の展望などについて伺いました。
※インタビューは2022年2月に実施。掲載されている情報は2022年6月公開当時のものです
——ゆめみがプロジェクトに参画したのは2020年5月からですが、まずは「au PAY」アプリの立ち上げ当初の課題や取り組み、お二人の役割などについてお聞かせください。
矢熊:組織の名称は変わりましたが、当時もいまと同じく決済関連サービスの企画に携わっていました。KDDI独自の “プリペイド型電子マネーサービス”「au WALLET」のプロジェクト推進からですので、もう5年くらいでしょうか。プロジェクトメンバーとしてはかなりの古株です。
コード決済サービスに関してKDDIは業界内でも後発でしたし、正直焦りはありました。しかも内製開発のため、限られたメンバー体制で決められた期限内に自社サービスをゼロから構築することは、ちょっと言葉にしがたいくらい大変な道のりでしたね(笑)。
スマホで決済できる「au PAY」アプリをリリースしたのは2019年4月。実質は「au WALLET」アプリにコード決済サービスを機能追加した、既存アプリを〝増改築〟するようなつぎはぎ状態であったことは否めませんでした。さらにはキャッシュレス化が加速するなか、アプリ機能やサービスをより充実させ、使い勝手を良くしていかなければならないことは明白でした。
鹿島:私は2019年10月入社で、プロジェクトに加わったのはそうした課題のあった時期でした。前職ではベンダーコントロールとしてアプリ開発に携わっていて、入社後も同じような役割ですが、矢熊が言ったようにKDDIは自社のあらゆるサービスやシステム開発を内製しているので、依頼先や相談相手が社内にいるという感じです。皆知識やノウハウが豊富でスキルも高く、KDDIの何よりの強みだなと思いました。
ただそうはいっても社内のリソースには限界があって、「au PAY」で実現したいプロジェクトに必要なだけの人材確保や実働は現実的に困難でした。リニューアルや移行に伴い、課題のあったデザインをまず見直そうとするなか、矢熊らと体制づくりについて話し合い、パートナー企業との協働が最善だという結論に至りました。その過程で数社にお声がけしたうちの一社がゆめみさんでした。
——壮絶な立ち上げ期であり、体制的にも大きな過渡期だったのですね。
ゆめみがプロジェクトに参画したのが2020年5月頃。消費税増税以降の大型キャンペーンなどもあって、キャッシュレス決済が一気に普及しはじめた時期でした。
矢熊:社会的なニーズの高まりを追い風に、他社に追いつけという機運も高まっていました。
au PAY アプリのプロジェクトに参加頂いた当初から、ゆめみさんとのデザインづくりのプロセスには手ごたえを覚えました。こちらが出した希望の反映が的確であり、スピード感もある。コミュニケーション能力も高いので、こちらのふわっとしたイメージや細かな投げかけをしっかり汲み取ってくれるし、何パターンかの切り口を変えた提案としてロジカルにまとめてくれる。
鹿島:グラフィックデザインの技術はもちろん、ネイティブアプリの構造に精通した高い設計力があるので、結果として出てくる提案の精度が明らかに違う。また、UIデザインにかぎらず、Webページも制作できれば、ソースコードも書けて、アプリの実装もそのまま対応できるという総合力も、ゆめみさんならではですね。
「au PAY」への チャージの一覧画面やサブ画面のUIデザインを依頼した際にはWebView 用のフロントエンド実装を、セキュリティ強化のために導入したオンライン本人確認サービス(eKYC)の実装案件でも、顔認証誘導画面のUIデザインとWebのフロントエンド領域をお任せしました。リソース不足となる局面に、幅広い業務領域で相談できるパートナーがいるというのはほんとうに心強いです。
それらの協働を経て、アプリデザインをいよいよ大幅刷新するとなった去年の9月頃、プロジェクト単位でスポット的に発注するこれまでの体制ではなく、より上流の、目標やゴール設定の段階からUIデザインチームとして一緒に取り組んでもらえないかというご相談をしました。
矢熊:はじめてのパートナー協働において、唯一気がかりだったのがコミュニケーションです。リモート体制が前提となった社会環境下で、これまで対面でのやりとりが主だったKDDIは当初、社内間でもなかなかコミュニケーションしづらい状態でした。それでさらに相手が外部となると……と懸念していた。けれど、ゆめみさんには以前からリモート体制が根付いていて、さらには個々の皆さんのコミュニケーション能力も高かった。そこも大きな決め手になりました。
また、決済サービスが主軸だった「au PAY」もユーザーのニーズに合わせて機能追加や改修を重ねながら進化していましたし、今後もさらなる展開を見据えるなか、多種多様な開発実績のあるゆめみさんの伴走は実に頼もしく映りました。
<ゆめみの実務について>
――開発を伴わず、UIデザイン領域に特化するような準委任契約は、ゆめみにとってもまれなケース。それでもゆめみへの深い理解とともに、ご自身でも手を動かしながら、チーム連携はもちろん社内外のステークホルダーと細やかな調整で万全の体制を築いてくださる矢熊様、鹿島様には絶大な信頼がありました。また、リブランディングによりスーパーアプリとして拡大する「au PAY」のメイン画面のリニューアルに携われるのは、ゆめみにとっても大きな成長になる。
そうして2022年1月の第一弾リニューアルに向けた、新たなプロジェクトが始動しました。
鹿島:「Ponta」との提携を機に、「au PAY」は1億人を超える国内最大級の会員基盤にまで拡大しました。いまやauやKDDIブランドとユーザーとの最大のタッチポイントであり、提携社を含めた各種サービス群にアクセスするための起点になるという重要な役割を担っています。多岐にわたる機能や操作をストレスなく、サービスに魅力を感じながら利用してもらえるよう、画面改修にあたってはユーザーの使いやすさを最重視し、徹底的に検討しました。
今回のデザインリニューアルにより、ホーム画面でコード決済できるようになりました。コードの読み取りもワンタップで起動し、クーポンもホーム画面から利用できるようになるなど、決済までの一連の操作がスムーズになりました。
<ゆめみが実施したこと>
-スペースやデータ容量など制限が多い中でも、背景を工夫したりアニメ―ションを活用したりすることで、アプリとしての〝余白〟を楽しめるよう設計
-auのテーマカラーであるオレンジを中心に、配色バランスをいろんなパターンで提示しながら、サービスに最も適したデザインを模索しました
-配色バランスによる工夫も含めて、幅広い層のユーザーが問題なく「使える」、きちんと「押せる」インターフェースづくりを最優先。そのうえで、デザインのかわいらしさや楽しみながら使える要素を検討しました
――大幅なデザイン刷新となりましたが、これからもまだまだリニューアルは続きます。今後の展望も含め、企画への思いをお聞かせください。
矢熊: 「au PAY」が成長するにつれ、必然的にステークホルダーも多くなれば、アプリに対する注目度や意識も年々高まっています。連携部署や社内外を問わず、興味をもったいろんな方々から問い合わせを受けたり、それぞれが独自の視点やミッションを持った人と一緒に新たな戦略を立てたりする機会が増えました。うれしい反応ですね。
機能や利用シーンの拡張も進み、ユーザー数も膨大になっています。皆が使いやすいアプリであることは大前提ですが、ニーズごとに細かくターゲットを絞り込み、必要に応じてサービスや機能を磨き上げること。お客さまにワクワクするような新たな体験をご提案することも忘れてはならないと、課題として常に意識しています。
アプリには鮮度も必要ですし、大小はありますがこの先もずっとリニューアルし続けるものだと思っています。
鹿島:アプリ内だけですべてが完結するものでもなく、Webサイトやマーケティング施策など、さまざまな事業と関係し、メディアなどとの連動も必須です。お客さまにアプリを使っていただくうえで、一連の動作やミニアプリを通じて移行した先でも違和感やそごなくお使いいただけるよう、つぎはぎのままになっている箇所を改善しながらデザイン統一を図っていきたいですね。
あと、リモート体制になっていろんな制限が生じた反面、時間が有効活用できるようになったことで、スケジュールが今まで以上にびっしり埋まってしまうので、話す時間もなく、スケジュール管理も課題ですね。
矢熊:それに関しては重々自覚するところなので、即時改善したいと思います。
――最後に、ゆめみとして今後刷新すべき点があればぜひご指摘ください。
鹿島:チーム体制としてはリモートでも問題なくコミュニケーションが取れていますし、ここまでが業務範疇という区切りもなくなったいま、課題を共有すれば同時進行で考えていただける。むしろ私自身がもっとレスポンスを早くしなければと反省するところです。
矢熊:長いおつきあいとなり、プロジェクトメンバーの顔触れにも幾度か変更がありましたが、ゆめみさんは層が厚いので、どなたが担当になってもスムーズに対応いただける。もちろんゆめみさん側での的確なご判断や調整があってのことなのですが、互いの社内調整がうまく機能し合っている。パートナーとの協働は初めての試みでしたが、アプリの成長とともにチームとしても成長していけると確信しています。
鹿島:UIデザインに限らず、チームとしても業務の幅を広げていきたいですね。サービスデザインなど網羅的に見ていただき、KDDI社内も盤石な組織として成長していければと思います。
――ありがとうございました!
YUMEMI Service Design Sprint
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